opening
台本
旭〜ペットボトル 輔〜ペットボトル
舞台にはペットボトル、空き缶が散乱している。
中央にダストボックス。
旭、舞台上手よりで板付き、ピンッと横になっている。輔、舞台下手袖待機。
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旭「ボクは、捨てられました」
照明:セリフきっかけで明転。
間。
輔、下手から捨てられた感じですっ飛んでくる。やがて起き上がる。
輔「『ポカリスエット』?はっ!ノンカロリー?気取ってんじゃねーよ!『なっちゃん』!?・・・誰だ!?『DAKARA』!?だーかーら!?」
輔、ダストボックスの周りを廻りながらペットボトル一個一個に因縁をつけ、袖に投げる。
旭、輔を怖がって立ち上がり恐る恐る遠巻きに様子を見る。途中、ダストボックス隅のペットボトルに気づき、守るように隠す。
二人、回りながら互いの上手・下手位置交代。
輔、どんどんペットボトルを投げる。
輔「わはははは!!わはははは!!見たまえ!まるでゴミのようだ!」
旭「ゴミじゃないですか」
輔、旭に気づく。
旭「何を、怒っているんですか?」
輔「あん?お前は・・・何のジュースだ?」
旭「いや、ジュースだなんてそんな・・・。ボクは『お茶』です。正確に言うと、お茶が入っていたボトルです・・・」
輔「フン!お前も人間に捨てられてこのゴミ箱に来たクチか?」天井、周囲を見回す。
旭「そのようですね・・でも、大丈夫。ここにいれば、きっと人間がボク達を『リサイクル』してくれますよ」天井、周囲を見回す。
輔「?リサイクルってなんだよ。あ!あれか!トイレのタンクに沈めて節水する利用法か?」
旭「・・・えっと・・・」困惑。
輔「あ!あれか!お風呂に沈めて節水するって利用法か?」
旭「・・・」何かを言いかける。
輔「あ!ペットボトルで作った風車(かざぐるま)か?たまに近所の庭に刺さっている奴か?アイデアお父さんが手作りした様なやつ!(その後もアイデアお父さんについて話し続ける)」
旭「アイデアお父さんってなんだよ!・・・あと何故、発想が全体的に貧乏くさい!?」
輔「はっ!人間なんて信用出来ねぇな!」ゆっくりと前に出る。
輔「俺と人間との出会いはコンビニだった。アイツは俺の事を気に入って、俺の事を買ってくれた」
旭「・・・商品だからね」手にしていたペットボトルを見る。
輔「出会った頃は熱い口付けまで交わしたのに」
旭「あ、飲むからね」ペットボトルでジェスチャー。
輔「身ぐるみまで剥がされて・・・」自分の身体を見る。
旭「ラベルを剥がしたんだ」ペットボトルでジェスチャー。
輔「用が済んだらあっさりと捨てやがって」
旭「分別したんだね」ペットボトルでジェスチャー。
輔「・・・お前は悔しくないのかよ!」怒りの矛先を旭に向ける。
輔「ゴミだぞ!ゴミ!誰からも必要とされない、何の利用価値も無い『ゴミ』だぞ!?」旭に詰め寄る。追う輔、追われる旭、回って舞台前方に。
旭「そりゃ僕だって!!(キレる旭。上の輔のセリフ切る)・・・悔しいですよ。僕だって、あなたと同じ思いをしてきたんだ・・・悔しいですよ!」
旭、輔とは別方向を向く。
間。
輔「・・おい」
旭「・・・」
輔「・・・おーい・・・」あせる。
旭「・・・」片手でペットボトルを凹ませる。
輔「!!・・・お〜〜い・・・・・・お茶」
旭「商品名で呼ばないで下さいよ。それにボクはお茶の中でも売上No.1の『伊右衛門』ですからね!」
輔「うるせぇ!お前なんか、読んでやる!」旭に飛びかかる。
旭「!」倒れて横になる。
輔「俳句を読ませろ!俳句を読ませろ!パッケージに書いてある俳句を読ませろ!」
旭「ちょ!伊右衛門に俳句は書いていない!!」
輔「何々?『仕事仕事の 毎日で 満員電車に揺られてる』!?」
旭「そんなの書いてない!!」
輔「何々?『春の日の ヤマザキ春の パン祭り』!?」
旭「ちょ、やーめ!!」
輔、ふざけて崩れている旭をいじめる(アドリブあり)。
旭、やめさせる(アドリブあり)。
旭「さっきから偉そうに!あなたは一体何なんですか!」
輔「あー、この格好じゃあ、無理も無いか」自分の身体を見る。
輔、ポケットからたらしていた赤い布をさっと自分の身体に巻き、格好をつける。
旭「!まさか・・・その赤いラベルは!!」たまげる。
輔「ようやく気づいたようだな」にやり。
旭「炭酸飲料界、否!このドリンク界の帝王的存在の!!・・コカ・コー・・!」
輔「ガラナです!!!」自慢げ。
間。
旭「・・・えー」ひく。
輔「でも、北海道限定だよ?」
旭、首を振り続ける。
照明:ゆっくりと暗転。
終
二人で舞台中央のダストボックスのフタを開ける。
特別断面図「recycle」オープニング映像開始。
台本:菊池旭